島根県松江市の「
ルイス・C・ティファニー庭園美術館」が、今日3月31日で閉館になった。
ここには仕事で1回、プライベートな旅行で1回行っただけだが、アール・ヌーボー好きなnancixとしては本当に「見てよかった」美術館だった。2回とも帰り際に立ち寄った安来市の「
足立美術館」(何と、私立だ!)も、和の世界を満喫できてよかったんだけどね。グルメでサービス精神いっぱいの館長さん、お元気そうだなあ…。
JR松江駅とは少し離れた(といっても車で8分程度だけど)温泉郷「松江しんじ湖温泉」に泊まり、温泉郷の入り口にあたる地域に位置する
一畑電鉄の松江しんじ湖温泉駅から、かわいい電車に乗って1駅。「ルイス・C・ティファニー庭園美術館駅」は無人駅で、下りればすぐにだたっ広い駐車場+立派な建築の美術館、なのだった。
とにかく広いひろい美術館で、展示室が1階に4ゾーン、2階には10ゾーン。
見上げるばかりのステンドグラス、ランプ、陶磁器、家具、ジュエリーまで
ルイス・C・ティファニーの作品群やルネ・ラリック、ガレなどの作品は本当に見応えがあった。
ジャポニズムの作品も多く、陶器や浮世絵などの"日本美術が西洋に与えた影響"が一見して理解できるような展示の仕方をしてあって、興味深かったのだ。
あ、ティファニーと言っても映画「ティファニーで朝食を」に登場する宝飾店の貴金属を置いているわけではないから、あのティファニー・ブルーの箱とリボンのファンの皆様は、お間違えなく。ルイス・C・ティファニーはティファニー社創業者の長男ですが、跡継ぎ息子なのに親に背いて宝飾店経営には加わらず、画家を志しガラス工芸に身を投じた、一族の異端者です。
といっても「
ティファニー・ランプ」では超有名なわけですが。
ステンドグラスの、孔雀をモチーフにしたあでやかな作品の前にレスリー・チョン張國榮を、鹿をモチーフにした作品「鹿の窓」の前にはトニー・レオン梁朝偉を配して、一流写真家に撮影してもらったら、どんなに耽美な写真が撮れるだろう…などと妄想していたのは、秘密。
楽しめたのだけど、二回ともとてもとても、観覧者が少なかった…採算取れるのか?と心配になるくらい。
"地元の神さんはありがたくない"と関西人は俗に言いますし、
神戸市立農業公園・ワイン城にも
神戸市立フルーツ・フラワーパークにもめったに行かない人間が、心配してもしょうがないんだけど。
ガーデニングにはとんと興味のない門外漢には、真夏の暑さのなかで直射日光カンカン照りのイングリッシュ・ガーデンに行く気には、到底なれず。
ガラス張りの回廊を伝って、結婚式もできるという無人のチャペルを覗いただけだった。まあ、地元の夢見る乙女なら、ここで式を挙げたくなるのかなあ、親戚友人にはしんじ湖温泉郷に泊まってもらえるしとしか思わなかったけど。
入場してすぐの館内にベーカリー&カフェレストランがあるのも、何だかそぐわないような気がしていた。薪を使った石窯焼きとはいえ、パンの匂いとゲージツって…何だか…。
スープと焼きたてパンとサラダのセットでも、結構高かったのよね。大阪のシティホテルのブレックファーストか!っていうくらい。
パン代をケチって飲まず食わずでもキャンバスと絵具代をケチらないのが、芸術家の気概じゃないのかーーー!(生来のビンボー性とオタク気質)
宍道湖を一望できるガラス張りの広い「休憩室」で、友人とかなり長い間うだうだとおしゃべりしていたのだけど、関西人としては、むしろここを落ち着けるカフェにすればいいのに、飲食物を出さないのはモッタイナイと感じていた。
出雲空港から宍道湖を突っ切る高速艇も、開館間もなかったときはともかく、数年後に訪れてもまだ就航していなかったのが気になった。
何より、美術館博物館って、開館当初は旅の情報雑誌や地元紙やテレビで取り上げられて話題になるけど、1年もすれば話題にならなくなるもの。常設展示以外に特別展を定期的に開いて、情報欄に掲載してもらったり広告を打ったりおトクな割引特典を考えたりしないと、客足が途絶えるのは常識なのだ。そして「ゆうばり問題」でもわかるとおり、地方自治体主導のハコものって、予算が取りにくいからと広報費をケチりがち。果たしてこの施設では、客集めの努力をしているのだろうか、作品保管維持だけでも精一杯じゃなかろうかと気がかりだった。
ルイス・C・ティファニー庭園美術館のホームページに掲載された「
美術館の閉館及びその原因について」を読むと、単なる”いちげん”の観光客さえ不安に感じたことが、実際にあったことがわかる。